第13回 サルビアと長良川鉄道

 [花鉄の部屋]第13回は夏の無人駅に咲くサルビアと長良川鉄道です。
タイトル= 花の駅に咲くサルビア
撮影者= 今井英明
撮影地= 岐阜県美濃市保木脇


 長良川鉄道は、旧国鉄時代に全通叶わなかった岐阜県と福井県を結ぶ「越美線」の岐阜県側を継承する「越美南線」として国鉄分割民営化前に特定地方交通線指定を受け、1986年(昭和61年)に設立された第三セクターです。現在、JR高山本線/太多線と接続する「美濃太田駅」(美濃加茂市)と「北濃駅」(郡上市)間の72.1km、38駅を結びます。
 鵜飼いで有名な清流・長良川沿いに走る車窓からは、深い緑の山々、渓谷と鉄橋など旅情溢れる風景が望めます。また、沿線には約400年の歴史を持つ国の重要無形民俗文化財である「郡上おどり」、旧中山道の太田宿、刃物の関、美濃和紙、うだつの上がる町並みなど歴史ある観光資源が点在しています。


 小学生時代からの鉄道写真ファンである今号の撮影者・今井氏は「マニアックな写真を追求するよりも、鉄道ファン以外の人にも感動してもらえるような、季節感や旅の匂いを表現したい」、
そのために「花は欠かせない存在。時に写真の主役として、時に脇役として…」と語って下さいました。

 出来るだけ時間を作っては撮影旅行に出掛けているという今井氏。撮影当日は「天候が今ひとつだった」ので、花の表情を主題にするよう視点を変え、長良川鉄道沿線のサルスベリ、ヒマワリ、ルドベキア、ナツズイセンなどと鉄道を絡めて撮影、最後に立ち寄った「湯の洞温泉口駅」に咲いていたのがサルビアの花だったそうです。

 今井氏のブログ「どん・ぶろ」では、たくさんの「花鉄」写真はもちろん、都会からローカルまで様々な鉄道風景写真を楽しむことができます。
 サルビア(シソ科アキギリ属)には白や紫、ブルーの花もありますが、和名は緋衣草(ヒゴロモソウ)。子供の頃にサルビアの蜜を吸って、ほのかな甘味を楽しん
だ事のある世代の人には、伝説のバンド「ジャックス」の早川義夫が作曲した歌『サルビアの花』も懐かしいはず。ややこしい暗喩たっぷりの失恋ソングなのですが、数多くのミュージシャンがカバーしています。

[花鉄(はなてつ)]とは細分化されている鉄道ファンは、乗ることが好きな「乗り鉄」「旅鉄」、撮影専門の「撮り鉄」、その発車ベルや走行音のファンを「録り鉄」、駅弁を食べ歩く「食べ鉄」、女性の鉄道ファンを「鉄子」などと呼ぶことがあるそうです。そこで、私たちは各地で出会える「花」と「鉄道」が共生する素敵な風景を、勝手に「花鉄」と名付けて愛し続けることにしました。



  flower with railway vol.12