第20回

花鉄の部屋第20回〜東急大井町線と紫君子蘭〜

タイトル= 紫の聖地
撮影者= railwaylife(ハンドルネーム)
撮影地= 東京都世田谷区

 [花鉄の部屋]第20回は、初夏の線路端に咲く紫君子蘭と東急大井町線です。
 東京城南地区の住宅街を横断する東急大井町線は、現在「大井町駅(品川区)」から「溝の口駅(神奈川県高津区)」までの16駅、12.4kmを結んでいます。東急各線(田園都市線・東横線・目黒線・池上線)との接続があり乗り換え至便。多くの専門学校や大学がキャンパスをおく一方、古刹九品仏浄真寺や豊かな森と貴重な生態系の残る都指定名勝の等々力渓谷など癒やしの空間も広がり、「住みたい町ランキング」常連の路線です。

 九品仏駅〜尾山台駅間で撮影された今号の花鉄画像の撮影者railwaylifeさんのブログに「今日は線路端に別の花を見つけた」として紫君子蘭が初めて登場したのは今から8年も前のこと。大好きなアジサイの見頃が終わってしまった寂しさを慰めてくれるかのように、鮮やかな紫色の花が咲いていたそうです。街角の公園などでもよく見かけるようになったこの花の名を知ったのはそれから数年後。

その後、紫君子蘭への思い入れが増し、毎年同じ場所で撮影を続け、身近な電車が花越しに駆けてゆく光景はやがてrailwaylifeさんにとって「とても大事な場所」になっていったそうです。
今ではその撮影ポイントを自ら『紫の聖地』と名付け、紫君子蘭を見守り続けていらっしゃいます。今号の画像は昨年6月下旬に撮影されたものです。

 雅な響きの紫君子蘭( 和名) はギリシャ語の「agape(愛)」と「anthos(花)」を語源とする「アガパンサス=愛の花」という学名を持つヒガンバナ科の多年草。南アフリカ原産で初夏に咲く首長漏斗状の六花弁が特徴で、花の色には淡い紫(青紫)色以外に白やピンク、濃い紫(青紫)もあります。

 日々、当たり前のように走っている通勤電車などを被写体にすることが多いというrailwaylifeさんは、「日常の有り難さを表す手段のひとつが花と鉄道のある風景の撮影である」、「毎年同じ場所で同じ花、同じ列車を撮影できるのは無事に一年を過ごせたことの何よりの証なのだ」と語って下さいました。
 「大切なのは、季節の無事の移ろいを表すこと」というrailwaylifeさんが発信し続けるブログ「railwaylife」には、親しみ深い愛すべき「花鉄」が満載です。

flower with railway vol.20