第22回

花鉄の部屋第21回〜カンナと新宿わかしお号〜

タイトル= 秋分の中舟生(なかふにゅう)
撮影者= 川ア淳平
撮影地= 茨城県常陸大宮市

 [花鉄の部屋]第22回は、奥久慈清流ラインという愛称をもつ水郡線と、線路端に群れ咲く赤いヒガンバナです。
 水郡線は、茨城県水戸市の「水戸駅」から福島県郡山市の「安積永盛駅」までと、茨城県那珂市の「上菅谷駅」から分岐して同県常陸太田市の「常陸太田駅」とを結ぶJR東日本の路線です。
 茨城の大子町にある水郡線「西金駅」は乗降客の少ない小さな駅ですが、砂利や砕石の積み出し基地として重要な役割を持っています。今号の画像も工事用臨時列車としていわき方面へ砕石の輸送中、秋の日差しを浴びながら専用貨車(ホキ800形)を牽引するディーゼル機関車(DE10形)です。

 自分なりに研究、工夫をしながら「撮影する路線の“らしさ”を大切にしたい」と語る今号の撮影者の川アさんが昨年の秋分の日、ご子息に「本物の機関車を見せてあげよう」と奥様と共に出掛け、「西金駅」構内の側線での入換作業を見学後に向かったのが「中舟生駅」でした。

「普段静かなこの駅が、この時期だけはその様相を一変させる」と云う「中舟生駅」のホームの向かいには無数のヒガンバナが一斉に花を咲かせ、赤一色の風景が広がっていました。「この光景が撮りたくて、一昨年から手ぐすねをひいていた」そうです。「春はヤマザクラが咲き、新緑に山が笑えば、夏は鮎釣りに久慈川が賑わい、秋は紅葉に染まって冬は雪化粧…そんな四季の風景の中を走る魅力ある水郡線をもっともっと撮影していきたい」と語る川アさんならではの一枚です。

 ヒガンバナは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。「曼珠沙華」の名でも知られています。赤い花色が特徴ですが園芸種には白や黄色、ピンク色などもあります。田んぼの畦や墓地周囲に群生が見られますが、これらは自生ではなくネズミ、モグラ、虫などの忌避効果や、土葬の時代に野生動物によって掘り荒されるのを防ぐため人為的に植えられたものだと言われています。

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 川アさんのブログ「桃浦停車場〜ももうらすてんしょ〜」では、茨城県や周辺各地の鉄道をモチーフにした楽しい撮影記を見ることが出来ます。

flower with railway vol.22