有名パティシエが作る高級スウィーツ全盛の時代でも、日本茶や抹茶のお茶請けには「やっぱり和菓子!」という方
も少なくないのでは? 繊細な妙味に加えて、その見た目の美しさは花鳥風月、日本の四季を堪能させてくれます。

 まもなくお花見の季節ということで、今回の主役は「桜餅」、噺は『花見小僧』です。
この噺は『おせつ徳三郎』という噺を二篇に分けたうちの上巻。趣の異なった下巻は『刀屋』と呼ばれます。
 ある大店の娘おせつは、父親がもってくる婿取りの話に全然乗ってこない。好きな男でもいるのかと訊ねてみても答えない。そこへ若い奉公人の徳三郎と深い仲になっていると注進してきた者がいました。直接訊いても白を切ると考えた主人は、向島の花見の季節に徳三郎と婆やと一緒におせつの供をした小僧を呼びつけ質しますがなかなか口を割 らない。とぼける小僧とお灸を据えるだ、宿下がり(=奉公人が実家へ帰るための休暇)をさせな いだのと脅かし問い詰める主人との遣り取りが、この噺の聴き所のひとつです。
  二人の逢瀬に手を貸した婆やが、食事をした船宿から邪魔な小僧に「気を効かせろ」と使いに出す時の口実が「ご主人様へのお土産に長命寺の桜餅を買っておいで」というものでした。

 長命寺の門前で今も営業を続ける「山本や」は江戸の桜餅の元祖といわれ、当時から行列の出来るたいへんな繁盛店でした。


「長命寺桜餅 山本や」の店内では、煎茶と共に3枚の大きな桜葉の塩漬けに包まれ桜餅が、今でもこうして木箱に入って出されます。(画像は葉を1枚除いた状態)

 

[旬の噺]は、季節の草花や農作物が登場する噺(=落語)の世界を紹介するコーナーです。