日本の国民生活と切っても切れない関係となったおむすびを皆さんは何と呼んでいますか? 右下のグラフに示したデータによると約90パーセントの人がおにぎりと呼び、男女の区別無くほぼ全ての年齢層で同じ傾向が見られます。詳細は割愛させて頂きましたが、年齢が上がるほどおむすびと呼ぶ人が少しずつ増えているようです。地域別となると多少のばらつきが見られ、群馬県・山梨県・静岡県・宮崎県などでは20%前後、広島県と山口県では36〜37%の人がおむすびと呼んでいます。全国的にはおむすび、おにぎりの他にも握り飯、握りまま、だま、おにんこ、おつくね…さまざまな呼ばれ方が今も残っていますし、その語源にも諸説あるようです。
 おむすびの歴史で触れたように、その起源である「屯食」は蒸したお米を握ったものであるところから「握り飯」をその呼び名の原型とする説があります。
それがやがて「おにぎり」と呼ばれるようになり、平安時代に女房詞として生まれたのがおむすびであるということです。



女房詞とは、宮中の女官の間で使われた一種の隠語で、おかず(=惣菜)、おつけ(=味噌汁)、おじや(=雑炊)、おひや(=冷水)なども元は女房詞であったとされています。
 また、古代の創造神「高御産巣日神」への信仰からおむすびと呼ばれたという説や、おにぎりは縁起を担いだもので「鬼切り=禍を退ける」ところからおにぎり、「お結び=良い縁を結ぶ」からおむすびと呼び分け、ある地方ではおむすびは大きな三角形で、おにぎりは小さな俵形のものと形で区別しているそうです。
「山へ行くときにはつぶれると困るからギューッとむすんだ大きなおむすびで、野良のときはおかずなどを食べながら少しつまむから小さく軽いおにぎりでいいんで、用途もにぎり方もちがうんですね。」
(参考@)


 前号紹介の江戸天保年間に書かれた『近世風俗志』(参考A)には握飯と記載され、多くの時代小説でも握り飯と書かれているものが多いようです。また、これも前号で引用した明治の文豪夏目漱石の妻鏡子の語り下ろしにはおむすびと記されています。(参考B)
 おにぎり、おむすびの違いは、時代性というより、むしろ地域によってその用途や具材、形、あるいは信仰などとの関係が深いようです。誰もが知っている昔話『おむすびころりん』にしても、現在発売されているものの中には、タイトルが『おむすびころころ』『おにぎりころりん』『にぎりめしごろごろ』となっている絵本もあります。

 「おむすびは小さな王国である。おむすびはそれぞれが独立国家として毅然たる意志があり、その主権に対して、にぎり飯とかおにぎりなる江戸時代よりの俗称を用いるのは、あまり感心したことではない。」
(参考C)

 前号紹介の江戸天保年間に書かれた『近世風俗志』(参考A)には握飯と記載され、多くの時代小説でも握り飯と書かれているものが多いようです。また、これも前号で引用した明治の文豪夏目漱石の妻鏡子の語り下ろしにはおむすびと記されています。(参考B)
 おにぎり、おむすびの違いは、時代性というより、むしろ地域によってその用途や具材、形、あるいは信仰などとの関係が深いようです。誰もが知っている昔話『おむすびころりん』にしても、現在発売されているものの中には、タイトルが『おむすびころころ』『おにぎりころりん』『にぎりめしごろごろ』となっている絵本もあります。


 「おむすびは小さな王国である。おむすびはそれぞれが独立国家として毅然たる意志があり、その主権に対して、にぎり飯とかおにぎりなる江戸時代よりの俗称を用いるのは、あまり感心したことではない。」 (参考C)
とユニークに断じているのはエッセイストで編集者の嵐山光三郎(1942〜)です。また、「昭和」を語る名文を遺すエッセイストで脚本家の向田邦子(1929−1981)は、その作品の中でおむすびという呼び名にとてもこだわっています。前号で紹介した「おむすびの似合う有名人」第1位だった放浪画家山下清がモデルの映画『裸の大将』やテレビシリーズ『裸の大将放浪記』の中では、当初おむすびと呼んでいましたが、最新版のシリーズではおにぎりと呼んでいます。清本人は日記(参考D)の中では「むすび」と書いています。
 多くの人がおにぎりと呼ぶ現代、なぜ
[おむすび礼賛]ではおむすびと呼ぶのか、との読者の皆さんからの疑問には編集企画のきっかけとなった坂村真民(1909−2006)の詩「おむすび」を掲載して、そのお答えにしたいと思います。(次頁)
出典:ごはんを食べよう国民運動推進協議会(兵庫県農政環境部内)実施「第9回 おむすびの日記念アンケート」より【応募期間】2008年1月4日〜2月29日 【応募方法】インターネット、携帯ウェブ 【回答者数】30,318人

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