DVD全盛の時代になり、多くの名作映画が入手し易くなりました。1946年(昭和21年)にハリウッドで制作された『子鹿物語』もその中の一本です。
子供の頃に絵本や児童書で親しんだ懐かしさから、観てみてびっくり。少年と子鹿の心温まるお話しなどという、描いていた牧歌的なイメージに思い切り足払いを喰わされることとなりました。
折良く昨年、大人向け完訳本として新たに出版された『鹿と少年』を読み直して、またまたびっくり。記憶の中にあ った『子鹿物語』は、「編集者の意図」や「教育的な配慮」やらの偏光装置を通して出版された抄訳であ
りダイジェスト版だったという訳です。
閉塞感漂う現在の社会状況を、80年前の世界恐慌の時代に似ているというアナリストもいますが、まさにその時代に書かれ出版された『子鹿物語』。今号では、皆が元気を無くしていた時代に、自ら大自然の中に身を置きながら揺るぎない人生観と自然観を描いた作家、マージョリー・キナン・ローリングズの生涯を【探〜tan〜】してみました。
白岩伸喜(編集部)
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