この物語の主題は12歳の少年ジョディが大人へと成長する過程であり、世界中で[児童書]として愛され続けている理由もそこにあるのでしょう。大地に生き、自然と対峙しながら生きていくには経験から学んでいくしかないのだとジョディの父親ペニーは教えてくれます。12歳という年齢は洋の東西を問わず、否応なしに厳しい大人への通過儀礼にさらされる運命なのかも知れません。スティーブン・キング(Stephen
Edwin King)原作の映画『スタンド・バイ・ミー』で冒険の旅へ出る少年たちも12歳、宮沢賢治も童話『雪渡り』の中で大人と子供の境界を12歳においています。また、『子鹿物語』では、家族愛や親子愛も重要なテーマとなっていますが、刊行された(1938年)当時の時代背景を思うと、この小説が発売と同時にアメリカ社会に広く歓迎されたのはただそれだけではなかったようです。